外壁の吹き付け塗装は、スプレーガンで塗料を吹き付ける工法で、短時間で広い範囲を均一に仕上げられるのが特徴です。
砂や石粉などの骨材を混ぜれば、多彩な模様や立体感を出すこともでき、デザイン性の高い外観を実現できます。
一方で、仕上げ方法や使用する塗料、建物の状態によって費用は大きく変動します。
想定以上の費用がかかるケースもあるため、あらかじめ相場を理解しておくことが大切です。
この記事では、吹き付け塗装の種類ごとの特徴や費用の目安などについてご紹介します。
費用や仕上がりに納得できる業者選びのポイントも解説しますので、参考になれば幸いです。
吹き付け塗装の種類と費用相場
一般的な戸建て住宅で外壁を吹き付け塗装する場合、費用の目安はおよそ40〜150万円です。
吹き付け塗装といってもさまざまな仕上げ方法があり、採用する方法によって見た目はもちろん費用が変わります。
ここでは、代表的な3種類の仕上げ方法と特徴を紹介します。
なお、実際の金額は建物の劣化状態や使用する塗料の種類・量、塗装面積などによって大きく変動するため、あくまでも参考としてご覧ください。
リシン仕上げ
リシン仕上げの費用の目安はおよそ1,000~3,000円/平方メートルです。
一般的な吹き付け仕上げ方法で、石や砂、樹脂、顔料などを混ぜた塗料を使用します。
細かいザラつきとマットな質感が特徴で、落ち着いた外観に仕上げられるため、幅広い住宅で採用されています。
また、透湿性と通気性が高く湿気がこもりにくい点もメリットです。
一方で、表面にザラつきがあり細かく凹凸になっているため汚れが付着しやすく、経年によってひび割れが生じやすいというデメリットもあります。
吹き付けタイル仕上げ
吹き付けタイル仕上げの費用の目安は、およそ2,000〜4,000円/平方メートルです。
タイルガンという専用の器具を使い、外壁表面に大きめの凹凸模様を形成します。
仕上がりは立体感があり、外壁に個性や重厚感を持たせられるのが特徴です。
リシン仕上げに比べて厚みがあり、耐久性に優れているため、ひび割れしにくく長期間美観を保ちやすい点がメリットです。
さらに、凹凸が大きく汚れがついても目立ちにくいという利点もあります。
大きなデメリットは少なく、見た目と機能性を両立させたい方におすすめの仕上げ方法です。
スタッコ仕上げ
スタッコ仕上げの費用の目安は、2,500~10,000円/平方メートルです。
リシンや吹き付けタイルと比べると費用は高くなりがちですが、その分デザイン性に優れています。
骨材が大きく厚みを持たせられるため、石造建築のような重厚感や立体感を表現でき、外観をより高級な印象に仕上げられます。
ただし凹凸が深いため、雨だれによる汚れやホコリが溜まりやすく、カビやコケが発生するリスクがある点は注意が必要です。
外壁の吹き付け塗装の費用を左右する要素
吹き付け塗装の費用は建物の広さだけでなく、使用する塗料の種類や足場の規模、職人の技術力など、さまざまな要素によって決まります。
まず大きな影響を与えるのが施工面積です。
外壁の面積が広ければ必要な塗料や作業時間が増えるため、費用も高くなります。
また、ベランダや出窓が多い住宅も、同じ延べ床面積でも外壁面積が増えて割高になる傾向です。
次に、使用する塗料の種類やグレードも費用を左右します。
一般的な塗料に比べて、遮熱・断熱・耐候性といった機能を備えた高機能塗料は単価が高めです。
ただし、初期費用は高くても再塗装の頻度を抑えられるため、長期的に見るとコストパフォーマンスに優れる場合があります。
さらに、吹き付け塗装は塗料が飛散しやすいため、建物全体をシートで覆う必要があり、足場や養生の設置費用も発生します。
最後に見逃せないのが職人の技術料です。
吹き付け塗装は均一な仕上がりを実現するのが難しく、経験豊富な職人に依頼するほど費用は高くなります。
外壁の吹き付け塗装の費用が高くなりやすいケース
適正な施工をしてもらう場合でも、条件次第では吹き付け塗装の費用が相場より高くなる場合があります。
代表的なのが、外壁の劣化が進んでいるケースです。
ひび割れや欠けが多い外壁はそのまま塗装できないため、下地補修やシーリングの打ち替えを行う必要があり、追加費用がかかります。
また、建物の形状も見積もりに影響します。
バルコニーや出窓、凹凸が多い外壁は養生や足場の設置に手間がかかり、同じ床面積の住宅でも費用が高くなりがちです。
さらに、大手の工務店やハウスメーカーに依頼する場合は、施工を下請けや孫請け業者が行うことが多く、中間マージンが発生します。
そのため、自社施工を行う専門業者に比べると、同じ内容の工事でも金額が高くなる傾向があります。
費用や仕上がりに納得できる業者選びのポイント
吹き付け塗装は職人の腕によって仕上がりに大きな差が出るため、依頼する業者を慎重に見極める必要があります。
同じ施工内容であっても、業者によって大きく費用が変わることもあるため、技術力と価格の両面で信頼できるかを確認することが大切です。
ここでは、業者選びでチェックしておきたい3つのポイントを紹介します。
吹き付け塗装の経験が豊富か
吹き付け工法は塗料を均等に吹き付けるのが難しく、仕上がりにムラが出やすい工法です。
経験の浅い業者に依頼すると、仕上がりが粗く見えてしまったり、塗膜の厚みが均一でなかったりしやすく、耐久性に影響することもあります。
施工実績が豊富な業者かどうか見極めるには、吹き付け塗装の施工事例を写真付きで提示してもらうのがおすすめの方法です。
施工事例は、業者の技術力を見極める有効な判断材料になります。
また、外壁劣化診断士や建築士などの資格を持つ職人が在籍しているかどうかも、業者選びの参考にすると安心です。
自社施工の地域密着型業者か
吹き付け塗装の費用は、自社施工の地域密着型業者かによっても大きく変わります。
大手工務店やハウスメーカーは、実際の施工は下請けや孫請け業者が行うケースが多く、中間マージンが発生して費用が割高になりがちです。
自社施工を行っている地域密着型の業者であれば、余計なマージンが発生しにくく、コストを抑えやすい傾向があります。
また、地域密着の業者は拠点が近く、急な依頼やアフターフォローにも柔軟に対応できることが多いです。
さらに、同じ地域で長く営業している業者は、近隣住民からの紹介や口コミによって仕事を得ていることが多く、お客様との信頼関係を築いている証拠といえます。
見積書や説明がわかりやすいか
業者を選ぶ際には、見積書の内容が明確かどうかを必ず確認しましょう。
優良な業者であれば、使用する塗料のメーカー名やグレード、塗装面積の計算方法、足場代・養生費などの内訳を細かく記載してくれます。
逆に「外壁塗装一式」といった大まかな記載しかない見積書は、後から追加費用を請求されるリスクが高いため注意が必要です。
さらに、担当者がこちらの質問に対して丁寧に説明してくれるかどうかも大切なポイントです。
専門用語ばかりで理解できないまま契約を急がせる業者は避けたほうがよいでしょう。
納得がいくまで丁寧に説明してくれるか、こちらの立場に立った提案をしてくれるかどうかは、信頼できる業者を見極める重要な要素です。
吹き付け塗装とローラー塗装の違いと向いているケース
外壁塗装にはいくつかの工法がありますが、その中でも「吹き付け塗装」と比較されることが多いのが「ローラー塗装」です。
両者は仕上がりの印象だけでなく費用や工期にも違いがあるため、希望する外観や住環境に合わせて適切な方法を選ぶことが大切です。
ここではそれぞれの特徴を整理し、どのようなケースに向いているのかを解説します。
ローラー塗装とはローラーを使用し手塗りで仕上げる方法
ローラー塗装は、塗料を含ませたローラーを使って職人が手作業で外壁を塗り上げていく方法です。
戸建住宅の外壁塗装では最も一般的に採用されており、塗料が飛び散りにくいため周囲の住宅や車両への影響が少ないことが大きなメリットです。
また、吹き付け機械を使わないため騒音が少なく、住宅街でも安心して施工できる点も支持されています。
一方で、すべて人の手による作業となるため、施工には時間がかかりやすいです。
特に複雑な凹凸のある外壁では、職人の技術力によって仕上がりに差が出やすく、塗りムラが生じやすい傾向があります。
美しく均一に仕上げるためには、経験豊富な職人の丁寧な作業が欠かせません。
吹き付け塗装が向いているケース
吹き付け塗装は、専用のスプレーガンを使って塗料を霧状に噴射し、外壁に吹き付けていく方法です。
広い面積を一気に仕上げられるため、工期を短縮できるのが最大の特徴です。
リシン仕上げやスタッコ仕上げなどによって凹凸感のある立体的な模様を表現でき、外観に高級感やデザイン性を持たせられます。
そのため、デザイン性を重視したい場合や、工期をできるだけ短く済ませたい場合には吹き付け塗装が適しています。
ただし、施工時には塗料が周囲に飛散しやすく、騒音も発生するため、隣家との距離が近い住宅地では注意が必要です。
ローラー塗装が向いているケース
ローラー塗装は、周囲に配慮しながら落ち着いた環境で工事を行いたいケースに向いています。
例えば、住宅密集地や交通量の多い道路沿いの住宅など、塗料が飛散するリスクを避けたい場合はローラー塗装のほうが安心です。
平坦な外壁や狭い面積の塗装であれば、ローラーを用いた手作業でも十分に効率的で、美しい仕上がりを実現できます。
費用面でも比較的リーズナブルに収まることが多いのもメリットです。
シンプルで実用的な仕上がりを求める住宅には、ローラー塗装が向いているといえるでしょう。
外壁の吹き付け塗装の費用感を把握して業者を探そう
吹き付け塗装は、広い面積を効率よく施工できるため、工期を短縮しながらデザイン性の高い仕上がりを実現できる工法です。
その一方で、塗料の飛散リスクや天候の影響を受けやすい点、さらに職人の技術力によって仕上がりに差が出やすい点には注意しましょう。
吹き付け塗装にかかる費用は施工面積や塗料の種類、依頼する業者などによって大きく変動します。
業者を選ぶ際には、費用だけでなく施工実績や説明の丁寧さなども含めて、総合的に判断するのをおすすめします。
効率性とデザイン性を兼ね備えた吹き付け塗装を安心して導入するために、費用感を理解し、信頼できる業者選びを心がけましょう。